無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10848日

 今日は2ヶ月に一度女房の母親がが大学病院に診察に行く日なので、わしが車で連れて行った。以前は女房の弟が行く事もあったんだが、4月以降、わしが一番時間的に自由になったので、その役割はこちらに回って来たということだ。別に嫌ではないんだが、車もほとんど運転しなくなったので、病院まで40分ほどだが結構疲れる。8時半ころ病院について、駐車場に車を止めると、あとはわし自由時間だ。寒いときだと車の中で寝とけばいいんだが、すでに気温は30度をこえているので窓をあけても1分もいられない。エアコンかけて15分ほどは古事記を読んだが、日差しが差し込んでくるとやっぱり暑い。そこで病院内の談話コーナーに行って、自動販売機でコーヒーを買い、今度こそ古事記を読もうと開けたんだが、そのときわしの後ろで大声が聞こえたんだな。何事かと思って振り向くと、わしより少し若いと思われる夫婦が立っていた。

 どうやら自動販売機で何を買うかを旦那が指図しているようだった。それだけならいいんだが、わしのすぐ後ろで、一台の自動販売機を指して、杖を振り回しているではないか。あぶないあぶない。あそこで買えということらしい。これは、あと10911日のブログで書いた、スーパーのレジで大声をあげたじいさん以来のおもしろさだと気が付いたわしは、古事記をとじて、そしらぬ顔をして注目していた。わしの横を通って自動販売機の前までいったんだが、旦那さんそこでまた大声でなにか言いながら隣の販売機を杖で指している。そちらで買うように奥さんに指示をしていたようだった。そこで飲み物を2本買い、さあ今度は椅子に座って、二人で持って来たパンを食べるのかと思いきや、今度は奥さんにテーブルを拭くふきんを持ってくるように、それが置いてあるところを杖で指している。とにかく指図するたびごとに杖を振り回すので危なくてしようがない。その間本人は1人でパンをかじっていたが、奥さんがふきんを持って帰ってくると、なんと今度はさっき買った販売機の釣り銭口を確認するようにとそこを杖で指しているんだな。奥さんもほっとけばいいのに、そこを確認して無いというと、また杖で指しながら、今度はご丁寧にも、釣り銭のレバーをひいて確認しろといっている。奥さん黙ってレバーをひいていたが、偉いね。わしには無理だ。

 夫婦円満にいっているんだろうから、端からとやかくいうことは無いとは思うが、もし奥さんが先になくなったら、あの旦那さん、1人では生きていけんだろうなとは思ったな。