無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10698日

 今から20年以上も前だと思うが、ぶら下がり健康器というのがはやり、たいていの家には一台置いてあった。ぶら下がるだけで健康になるんなら医者はいらんわと、わしは買わなかったんだが、結局その当時買った家でも誰も使わなくなり、最後は衣紋掛けとして使われているのをよく見かけた。女房の父親は今風に言えば健康器具オタクとでもいうか、家にはいろいろ珍しいものが揃っていたんだが、なぜかぶら下がり健康器は無かった。不思議に思って女房に聞いてみたところ、既に処分したという話だったな。

 わしも結婚した頃はよく肩が凝っていたので、女房の実家にあった、まだ誰も使った事が無いという、電気針を借りて試してみた事があった。針といっても刺すわけではなく、皮膚に置いて電気刺激を与えるという理屈だった。電源が100Vだったので大丈夫かなという危惧はあったんだが、説明書を読んで、やってみたところ、ジュッという奇妙な音がして煙が出た。よく見ると皮膚に小さな黒い点ができているではないか。つまり焼けたんだな。女房は大笑いしていたが、これはちょっと怖かったな。おかげで肩こりなんかどっかに吹っ飛んでしまった。誰も使わないはずだ。

 さて、ぶら下がり健康器だが、若いときはそういうふうに否定的だったが、最近少し興味がでてきた。というのも、5年程ずっと腰の痛みが続いていて、一向に収まる気配がない。ネット上で今でも売られている、ぶら下がり健康器の、あなたの背骨の負担を軽くするという能書きは、腰痛持ちとなった今のわしには、じゅうぶん説得力があるんだな。しかし、女房もうるさいので、わしも以前のようにすぐに飛びつく事はしなくなった。少し進歩したともいえるが、それでも2週間程で辛抱できなくなり、あっさり注文してしまった。

 これでわしも世間から20年遅れて、晴れてぶら下がり健康器のオーナーになったわけだ。しかし、使ってみて、体力の低下には驚かされたな。懸垂0回、片手ぶらさがり3秒、両手ぶら下がり10秒、惨憺たる状況だ。16歳で入学した学校の入学試験の体力テストで、片手懸垂10秒以上、懸垂○○回以上などとあったが、こんなことは軽々とクリアーしたのを覚えている。あれから50年、落ちるとこまで落ちたような感があるな。衣紋掛けになって、女房にそれみたことかと言われる事がないよう、細く長くやってみるかな。