無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10646日

 わしは33歳にとき、田舎に小さな家を新築した。両親がわしの名義で買っていた土地があったので、少ない給料で借金を背負うのは大変だったが、思い切った。女房の親戚の棟梁に、資金がこれだけしかないのでこの範囲でよろしくと頼んで、引き受けてもらった関係で、棟梁もどこかでケチらなければ利益がでなかったんだろう、プロパンガスに○○ガスを使ってくれたら機器代、設置工事代がただになるが、それでもいいかと聞いて来た。この棟梁は若いとき、宮大工の修行をしたそうで、その方面では有名な人らしく、○○ガスの会長宅や茶室などを新築して懇意にしていたようだ。

 田んぼの中に都市ガスが通っているはずもなく、燃料としてはプロパンガスしか選択肢がないので、断る理由はなかったな。ガス検知器や消火器までサービスしてくれるという至れり尽くせりで、ガス料金がいくらかなどという事は考えもしなかった。というより、わしはプロパンガス料金は、この地区はどこも同じだと思っていたんだな。それが店によって違うようだと気が付いたのは、愚かな事に、つい最近になってからのことだ。

 10年程して、田舎の家を売って、市内の親の家を壊した跡地に、2所帯住宅を建てて同居する事になったんだが、この時も同じ棟梁で、燃料に関しては○○ガスならすべて無料という、以前と同じ条件を出して来た。わしはそれでOKだったんだが、今度はわしの両親もいるのでちょっと面倒だった。せっかく今迄都市ガスを使ってきたのに、今更ボンベなんか置けるかと言い出したんだな。旧市内なので、ここらは早くから都市ガスが通っている。確かに一理あるんだが、とにかく金がないという現実は如何ともし難く、結局親が折れた。そして、その後25年間、何の疑いも無く使い続けてきた。

 最近ネット上に、プロパンガス料金を比較できるサイトがあることに気が付いた。プロパンガス料金は市内はどの業者も一緒だろうと考えていたが、どうやら業者によって違うし、結構アバウトな料金設定らしいということがわかった。自分の家のガス料金を入力すると、料金がその地方で高いか安いかわかるというのがあったので、試しに入力してみて驚いたな。結果は極めて高いとでた。なんと知らないうちに、35年間、この地方で最高に近い料金を払い続けてきたということだな。無料で設置してもペイするはずだ。

 女房とこんな話しをして2日程たった日の午後、まるで計ったようにやって来たのが、都市ガスの営業マンだった。都市ガスも自由化されるので今までのような殿様商売はできなくなるようで、都市ガス普及地区でボンベを置いてある家を回っているらしい。営業がうまくいくかどうかは全くタイミングの問題で、去年なら話も聞かずに帰ってもらっただろうが、今回はゆっくり話をきいてみた。全部のガス器具を最新のものに取り替えて、かかる料金はほぼ工事費くらいで○○円で、保証は8年、ガス料金も安くなると聞いて、わしらは即決したな。○○ガスのこの地区の担当者はずっと同じ人で、言いにくいが背に腹は代えられん。まあ35年間使って来たんだから、○○ガスに義理は果たしただろう。