無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10641日

 楽天の期間限定ポイントの期限が切れそうになったので、百田尚樹の『カエルの楽園』を購入して昨日読了した。ネットで評判になっていた本なので、期待はしていたが、まさに期待通りの面白さだったな。一気に読んでしまった。人間の世界で書くとこれほど単純化はできなかっただろう。今の東アジアの状況が的確に表現されていて非常に良い本だとわしは思った。

 わしも本は好きで、かなり読んだ方だが、本格的に読み出したのは中学生になってからだった。もちろん小学生の時も学校の図書室などで借りて読む事もあったが、それほと頻繁ではなかった。わしが初めて小学校の図書館で本を借りて読んだのは、昭和35年に新しい小学校に転校した3年生のときだったな。『じっぷじっぷと空飛ぶ円盤』という題名で、子供が息を吸い込むと空が飛べるようになるというような内容だった。子供向けのハードカバーの本だったから、恐らく何かの全集だったんだろう。なぜ覚えているかというと、わしはこの本でたいへん恥ずかしい思いをしたからだ。

 ある日、友達が図書室へ行って本を借りるというので、わしも一緒について行ったんだが、図書室というのはわしにとっては初めての経験だった。その時に一緒に行った友達が、これが面白かったといって紹介してくれたのがあの『じっぷじっぷと空飛ぶ円盤』だった。わしはその本を借りようと思って、教えられたとおり、本の最後に挟んである図書カードに○月○日3年月組○○○○と書いて担当者に渡して部屋を出た。

 一週間ほどして読み終えたので、わしは本を図書室に返しに行った。ちょうど友達が風邪ひきで休んでいたので、初めて1人で入室したんだが、誰もいなかったので本を返してすぐに教室に帰った。わしはそれで本のことはすっかり忘れていたんだが、これが間違いのもとになった。それから2日程たった昼休みに給食を食べていると、図書室の担当者が教室に入って来て、先生と何か話した後、わしの名前を呼んで、借りた本を返してないので明日持ってくださいと言い出した。「返しました。」というと「返って来ていませんよ。」と事務的に言うんだが、担当者は今から考えれば女子学生のアルバイトだったな。原因は、わしが返す時に、提出してあった図書カードを本に挟むのを忘れたことだったんだが、「どこに返したの?」とか「ルールを守って」とか、まるで知らない者が勝手に利用するなと言わんばかりの言い方で、問いつめられた挙句、図書室まで連れて行かれた。

 もちろん間違えたわしが悪いんだが、学生アルバイトが、直接子供に本を返せなんて教室にまで来て言わなくても、○○君に本を返すように伝えてくださいと、担任に言えばすむことだろうにな。転校したばかりで、同級生の名前も覚えてない頃だったので、特にショックは大きかったんだろう。そりゃ今ならそんなこと屁とも思わないが、大人の世界は子供の世界の延長ではなく、どこかで断絶しているということだろうな。