無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10548日

 小さい頃よく読んだ本の中に、大平陽介著「少年少女日本剣豪物語」というのがあった。ハードカバーの立派な装丁の本で、値段も高かったんじゃないだろうかな。初版が昭和31年らしいから、おそらく兄が買ってもらったものだろう。塚原卜伝林崎甚助柳生但馬守宗矩、小野次郎右衛門忠明、伊藤一刀斎、榊原健吉、山岡鉄舟上泉伊勢守信綱、宮本武蔵、斎藤弥九郎、男谷下総守、まだいたかもしれないが、今思い出すだけでもこれだけの剣豪が紹介されていた。わしの剣豪に関する知識の源はこの本だと言っても過言ではないだろう。

 子供向けの本だといっても馬鹿にしてはいけない。無駄無く、よくまとまった非常に読みやすい本だった。小学校4〜5年生の頃、学校から帰ると、内職しているおふくろの横で、おやつを食べながら何回も読み返していたので、ほとんど暗記してしまった。剣豪の話を知っていたところで、特段役に立つことはないが、わしがこの本をよく読んでいたことは、親父も覚えていたようで、その晩年、剣豪物語は捨てずに記念にとっておいたはずだと言っていたが、残念ながら遺品の中には無かった。

 塚原卜伝の新当流一の太刀。母親と貧しい生活をしながら、1人で稽古を続けた林崎甚助の林崎無想流。小野派一刀流の小野次郎右衛門忠明は、若いときは御子神典善と名乗っていて、伊藤一刀斎の弟子だったが、兄弟子善鬼を倒し一刀流を継承した。榊原健吉はただ1人、兜切りに成功した。山岡鉄舟は死ぬまで布団を敷かず、畳に上に寝ていた。新陰流の上泉伊勢守信綱。斎藤弥九郎は子だくさんで、4番目以降の子は面倒だったのか、四郎ノ助、五郎ノ助、六郎ノ助という名前だった。今でも名前を聞いたら、挿絵とともに、いろいろなエピソードが浮かんで来る。

 剣術のすばらしさだけでなく、人間のすばらしさが余す所無く描かれていて、今でも子供必読の書だと思っている。パン屋を和菓子屋に変更するなどという、細かなことで話題になった道徳の教科書だが、そんな本をわざわざ作って読ませなくても、大平陽介著「少年少女日本剣豪物語」を読ませたほうがよっぽど役に立つと思うがな。自分の子供には読ませられなかったので、どっかで探して来て、孫には読ませたいと思っている。