無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10423日

 朝食後、女房が突然隣の市にできたイオンモールに行ってみたいと言い出した。うちから車で1時間ちょっとかかる、忖度とかなんとか馬鹿なことを言って、最近国会あたりでちょっと有名になったあの町だ。わしはイオンなんかは全く信用してないので、近所にあるイオンにも行ってないし、マルナカイオングループに入ってからは行ったことがない。ただし、女房はマルナカを時々利用している。

 わしの車のは8年目になるので、今回のように新しくできた施設へ行くときは、ナビは全くあてにならない。通常、初めてのところに行く時は、ストリートビューで確認するようにしてるんだが、今回のように急に思い立って、さあ出かけようと言われると、その時間もなかった。マップで一応確認はしたが、女房は運転しないので、自分のスマホでナビ位は見るだろうと思って油断していた。これが大きな間違いだった。

 途中の国道は海岸線を走っていて、遠くに連なる島影、青い海、白い砂浜が続いている。わしらは見慣れた光景だが、多島海を知らない人たちにとっては珍しい光景だろう。日没時になると、島影に沈みゆく夕陽に空や海が朱に染まり、沖を通る大小の貨物船やタンカーがシルエットなり浮かび上がってくる。これは是非見に来ていただきたい。

 連合艦隊健在なりし頃は、柱島泊地へ向かう艦隊はこの沖を通り、途中N島で進路を右にとりN島宇和間沖で左に回頭していたらしい。宇垣中将の戦藻録にも書いてあったし、N島宇和間出身の女房の叔父さんも、すぐ沖を通る戦艦大和を見たと言っていたから間違いないだろう。

 まあ、それはいいんだが、いよいよイオンモールが近づいてきたので、女房にどこの角を曲がるのか教えてくれというと、驚いたことにマップは使ったことがないのでわからないと言い出した。そんなこと今更言うなよなと、ぶつぶつ言いながらしばらく走っていると、突然、イオンの看板が見えたと左方向を指さした。そこは違うだろうと言いながらも、一応左折してそこへ行ってみると、案の定イオンモールではなく、単なるスーパーのイオンだった。こんな街の真ん中にイオンモールがあるわけないだろう。

 結局自分のスマホのナビを使って何とか到着できたが、ナビがなかったら、こんな簡単な目的地にも行けないという現実には驚いた。7年前に今の車に変える前までは、1人で地図を見ながらどこへでも行っていたんだが、歳のせいか、或いはナビに慣れすぎたのか、それができなくなっていた。わしは若い頃から地図には自信があって、一度見たらかなり詳しく頭に入っていたので、途中で何回も見直すということは無かった。やはり、歳とともに、使わない能力は容赦なく落ちていくということだろう。これはちょっとショックだったな。