無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10389日

 ノーベル文学賞に日系英国人のカズオイシグロ氏が選ばれて、また肩透かしをくらった人たちが騒いでいたようだ。わしは以前から、○○賞受賞作品とか、○○新人賞、○川賞、○木賞受賞作品等は読んでみたいとも思ったことがない。何でもそうだが、ある程度時間がたって、それでも価値が変わらないことが重要なことであって、出版社に誘導された一時のはやりすたりなんかに付き合って、大事な時間とお金を浪費したくなかった。乱読は人にしてもらって、評価され、歴史のふるいから生き残ったものだけを読むことができれば、効率よく、人の何倍も有用な情報を得ることができるのではないのかと思っている。

 ところが今回のカズオイシグロ氏はちょっと違って、非常に興味がある。だいぶ昔になるが、英語で小説を書いているカズオイシグロという名前をどこかで聞いたことがあった。そしてずっと日本人が英語を勉強して小説を書いていると思っていた。英会話とかビジネス英語ではなく、小説が書けるほどの英語力を身つけたこの人はどんな人で、どんな勉強をしたのか、ちょっと気にはなった。というのも、わしも英語は好きな方でいろいろ手をだしてやってはみたが、それほど進歩がない。そこで効果的な勉強法はないのかと探している時だったからだ。

 結局この人は、子供のときから向こうで教育を受けた、中身は英国人だったから、そういう面では参考にはならなかったが、逆にそういう人がどんな小説を書くのかということに興味がわいてきた。しかし、当時わしの中では、小説というもの自体のプライオリティーが低いということもあって、一度も読んだことは無かった。

 2年前に一気に読んだ、吉川英治の新平家物語太平記、これは底抜けに面白かった。やはり小説とは人に読んでもらうものだから、これくらい面白くなければだめだろう。わしもわざわざ舞台となった吉野まで尋ねて行ったくらいだ。この頃になぜか、何の脈絡もなく、カズオイシグロという名前が思い浮かんだことがあった。わしの頭の中で、日本の歴史をこれだけ面白く表現する吉川英治と、元日本人の作家カズオイシグロがなぜか結びついていた。

 その後、これらのことはとっくに忘れていたが、先月のニュースでノーベル文学賞受賞を聞いて、そんなことがあったのを思いだした。いろいろ調べてみると作品もなかなか面白そうで、興味がわいてきた。新平家物語のように一気に読み通せるかどうか、昨日ネットで日の名残りを注文した。届くのが楽しみだ。