無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10373日

 今朝は、女房が仕事に行ったのも気が付かないで熟睡してしまった。7時過ぎに、犬の小太郎が隣のリビング兼ダイニングの床を、カツカツと歩き回る音で目が覚めた。ミニチュアダックスは足が短いので、カツカツという足音もピッチが速い。一度耳につくともう寝ていられない。そしてさかんにキャンキャンとかヒイヒイとかなきながら、入れてほしいとばかりに、扉をがりがり擦るのでうるさくてしようがない。まあ、ここまではよくあるパターンなんだが、今朝はそれだけでは済まなかった。

 起きてリビングに入った瞬間、鼻をつく饐えたような酸っぱい匂い。これはもしかしたらと思って犬のトイレを見ると、大量のしっこの上に、大量のうんこが散らばっており、しかもご丁寧にその上を何回も踏んでいる。その足でキッチン、風呂場、リビング兼ダイニング、あらゆる所を短足ハイピッチで歩き回っているので、どこもここもうんこのついた足跡だらけになっていた。幸い犬のうんこは人間のように臭くないので、これくらいで文句を言っていたら、人のうんこの始末をしている人に申し訳がない。

 と思いつつも、それでも腹が立ったので、「この馬鹿犬う!!!!!!」と一言だけ言わせてもらって、掃除にかかった。まず転がっている塊をトイレットペーパーでつまんでトイレに捨てた。その後、雑巾で拭こうかと思ったが、雑巾がうんこだらけになったら洗うのが面倒なので、フローリングワイパーを使って、ウェットシートを3枚取り替えながらやっと拭き終わった時には、すでに30分以上経過していた。そして最後の仕上げで、いつもの通り、雑巾で全体を丁寧に拭いて作業は終了した。この間小太郎はずっとソファの上から見ていたが、多分、うんこがついたくらいで、なんでこんな大騒ぎになっているのか、理解できてないんだろうな。

 40年も前のことだが、わしが乗っていた路面電車が、駅でもない所で警笛と共に突然停止したことがあった。わしは前の方に立っていたので、どうしてこんなところで止まったんだろうと、運転席の横に立って、前をのぞいてみてびっくりした。なんと電車の3mほど先で、犬が背中を丸めてうんこをしながら、恨めしそうにこちらを見上げているではないか。見ていた人達はみんな、その情けない格好に大笑いだった。笑われたのがわかったのかどうか、犬は3個か4個ほどのうんこを線路上に残して、平然と立ち去っていった。でっかい電車が迫って来ても、警笛を鳴らされても途中でやめないで、最後まで出し切るんだから、排便は犬にとってはよっぽど大事な行為なんだろう。そんな大事な行為を済ませて、満足げに立ち去ってい行く犬の後ろ姿を見ていると、一種の清々しささえ感じさせられた。