無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと9521日 寅さん

2月25日に「男はつらいよ」49作全部見終わった。契約しているdTVで、男はつらいよ全作品を公開しているのに気が付いたのが1月半ば、それから毎日1作から2作を延々と見続けた。

第1作「男はつらいよ」を映画館でみたのが1969年8月、17歳の時のことだったから、もう半世紀も前のことだ。渥美清出演の最後の作品が、1995年12月の「寅次郎紅の花」なので、26年間で描かれた世界をたった1か月で通り過ぎたということになる。そこには、一年一作あるいは2作を27年かけてみたのとはまた違う、新しい世界をみたような気がしている。

寅さんもおいちゃんもおばちゃんも、さくらもひろしも、たこ社長もみんな駆け足で年をとっていく。満男なんかたった半月で小学生から社会人になってしまった。寅さんの恋愛という設定も段々と浮き上がってくる。早送りフィルムのような世界の中では、そのような変化が増幅されてくるようだ。

1990年あたりからは寅さんに以前のような活力が感じられなくなり、46作「寅次郎の縁談」、47作「拝啓寅次郎様」48作「寅次郎紅の花」では痛々しくて見ていられなかった。表情も乏しく、立っているのがやっとというような感じで、心なしか話のテンポが周囲とずれることもあった。また、体がきつかったんだろう、最後は首のマフラーを巻いて、背広に袖を通していた。この映画をここまで引っ張ることはなかったんじゃないかと思わずにはいられなかった。

今村昌平監督が「復讐するは我にあり」の主役として渥美清にオファーしたこともあったらしい。寅さんのイメージを守るために断ったらしいが、悪党の渥美清もみたかったような気がする。2代目おいちゃん役の松村達夫はが5作で降りているのは、マンネリ化を避けたいということもあったからなんだろうか。

いくら会社にとってのドル箱とはいえ、25作「ハイビスカスの花」あたりでハッピーエンドで終わらせといたほうがよかったのではないかというのが、駆け足で見終わった後の感想だ。