無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと8952日 初めての胃カメラ

先月、オリンピックが終わった頃のことだが、夜作業をしていると胃から熱いものがこみあげてきて、耳の奥や喉、背中や胸が痛くなった。何年も前から時たま経験していたので、おそらく胃酸が逆流してきたのに違いないと素人判断して、家にあったランソプラゾールとセルベックスをのんでその晩は寝た。

以前ならこれ1回で完治していたが、どうしたことか今回は1週間たっても10日たってもむかむかした感じが治まらない。強い薬を連用するのも心配なのでしばらく休んだりして様子を見ていたが調子は良くならない。ひょっとすると、これはソファに寝転び、だらだらと飲み食いしながらオリンピックを見続けた報いかもしれない。それなら自業自得ということで納得できる。

HbA1cが5.6あるので糖分は控えた方がいいのはわかっていても、ピーナツの入った煎餅や黒蜜かりんとうが好きなので中々やめられない。オリンピック期間中、誰もいないのを幸いに、コーラやサイダーを飲みながらこれらをぼりぼりかじっていたんだから、血糖に関しては勿論、胃にも良いわけはない。それみたことかと女房には不摂生を責められるし、少々不安にもなってきたし、いつまでも医者嫌いとも言っておれず、とうとう9月9日に生まれて初めて胃カメラ検査をすることになった。

当日、鼻から入れる方が楽なんですけど、鼻から入れるとくしゃみを誘発することがあり、それがコロナ感染の原因になるので、今回は口から入れますと言われた。口と喉に麻酔をするので大丈夫らしいが、あんな太いのを喉の奥に入れられたら嘔吐するんじゃないかとちょっと不安になった。

検査は当然クリニックの医者がするものと思っていたら、ファイバースコープの先をピカピカ光らせながら現れたのは見たことのない人だった。マスクとキャップで表情はよくわからないが、目のあたりは昔よく小林旭の渡り鳥シリーズに出てきた殺し屋に似ていた。たぶん近所にある総合病院からのアルバイトだろう。

そんなことを考えているうちに、検査は始まった。喉はすっと通ったが、食道は押し広げるような違和感があった。胃に入ったあとは楽になったが、楽になると緊張も解けてモニターが見えないことが気になってきた。今生まれて初めて自分の体の中を直接映し出しているのに、本人にそれが見えないのはなんとも歯がゆい。せめてこちら向きにモニターをもう1台用意してほしい。

知り合いの開業医は自分の息子が医師になった時、保険点数が高いので内視鏡検査を専門にするように勧めたと話していたから、実際コストパフォーマンスが良いのだろう。どこまで本当か知らないが、胃がんの手術と白内障手術の点数が同じだとかで眼科が儲けすぎだとも言っていた。いずれにしても医者は儲かるということらしいが、それならせめてモニターくらい見せてくれよと言いたい。

15分くらいで検査は無事終了して、結果は全く異状なしだった。逆流性食道炎の兆候もなく、つけるほどの病名もないが、敢えて病名を付けるなら非びらん性胃食道逆流症で、症状が出た時は薬局でガスターを買って飲んどけば治ると言われた。

検査が終わって家に帰るとなんとなく胃のあたりもすっきりして、空腹も気持ち良かった。病は気からとはよく言ったものだ。