自らを国技と称する大相撲は本当に日本国民に人気があるのだろうか。NHKですべての場所を実況中継していることにより、なんとなく浸透しているように感じるかもしれないが、昔からのコアの相撲ファンというのはかなり減少しているような気がしている。このことは私だけではなく、多くの日本人は肌感覚でわかっているのではないだろうか。
しかしNHKは海外まで実況中継して、ニュースで取り上げて特集まで組むこともある。そこまでしなくてもと思いながらも、どうでもいいことだからメディアに騙されたふりをしているのか、或いは自分に関係ないので、見なければいいと無視しているか、いろいろ理由はいろいろあるだろう。しかし話はそう簡単ではない。相撲協会は公益財団法人であり、NHKは総務省が所管する外郭団体だから、まわり回ってみなさんの金が使われているということになる。本当は人気が無いとばれたら批判も出てくるかもしれない。
昭和30年代、40年代はどこのうちに行っても年寄りは相撲をみていたし、私の職場でも相撲の賭け事も行われていた。大相撲が所謂生活の一部になっていたことは間違いなかった。ところが今はどうかというと、近所に年寄りは増えたが、私の周囲で夕方相撲を見ている人に会ったことが無い。なぜそうなったのか理由は簡単だ。
10年前に94歳で死んだ父も定年後は夕方になると焼酎を飲みながら相撲観戦を楽しみにしていた。そんな父親が見なくなったのは朝青龍に続いて白鵬などのモンゴル力士が激増したことが原因だった。「勝ち負けが問題ではない、あんな相撲は面白くない。」とよく言っていた。結局日本人の相撲が見たいと、心の底では多くの人達が思っていたのではないだろうか。
このままNHKが人気を煽って、今のまま相撲協会を維持していくことが大相撲にとって本当にいいことなのかはなはだ疑問だ。改めるべきところは改めてもいいが、残すべきものは残さなければ、日光江戸村のちょんまげを結った職員と同じになってしまう日も近いだろう。暴力事件や賭博で離れたファンも多いだろうが、それらの人たちは相撲が嫌いになったわけではないので、治まれば帰って来る。しかし、父が言っていた「あんな相撲」は面白くないと思ったファンは、今の相撲そのものを否定している以上帰って来ることはないだろう。
近い将来、NHKが縮小されて相撲中継が無くなったら、作られた相撲人気も消えてなくなることだろう。人々から忘れられた挙句、一部の利害関係者が日光江戸村ならぬ江戸相撲村でも作って、ちょんまげを結った職員が裸になって相撲を取って見せるということにならなければいいが。