無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと8612日 中学生との会話

今朝11時頃、近所のスーパーに注文していたパンを受け取りに出かけた。勝手口から道路に出ると、ちょうど学校帰りの中学生と鉢合わせになった。その中学生は何かぶつぶつと言っていたので、ちょっと気になって顔を見た時にチラッと目が合った。それだけのことで、スーパーの方向に歩き始めると後ろから「こんにちは」という声が聞こえた。

誰か他に知り合いがいたのかなと思って振り返るとその中学生しかいない。小学生はよく挨拶してくれるが、中学生に挨拶された経験はあまりない。ちょっと戸惑ったが「こんにちは」と返した。真面目そうな生徒で同じ方向に歩きながら少し話をした。

聞くと、午後から志望校見学があるので、3年生は早めに学校を終わらせてくれたということだった。志望先は工業高校の電気電子関係の学科でいろいろ資格を取りたいと話していた。下に弟や妹もいるので、早く資格をとることを親にも勧められているらしい。

どうやら工業高校をでて就職するか専門学校へいくつもりで、大学に進学することは考えてないようだったので、大きなお世話かもしれないが、それなら高専もいいよと教えてあげた。意外そうな顔をしたので、50年前に自分も高専をでていることを告げて、卒後の進路のことなど、利点を少し話してあげると多少納得したようだった。

学費の問題や、距離的に家から通えないことなど負の面を話したところでスーパーの前に着いた。家はこの先だというのでそこで激励をして別れた。将来に対する希望などを、自分の子供以外の中学生から聞いたのは初めての経験だったので嬉しくなっていろいろ話したが、後から女房に怒られようとはこの時は想像もできなかった。

それから1時間ほどして仕事から帰って来た女房にこのことを話すと、工業高校なら家から通えるので安いが、高専なら寮費、食費など余分なお金がかかる、工業高校で本人が納得しているのなら、親の負担が増えるような話はしない方がよかったのにと言われた。寝た子を起こすなということらしい。

しかし、これにはちょっと納得がいかなかった。高卒後専門学校へ行くのなら高専と変わらないし、なにも巨額の費用が必要な私立の医大を勧めるわけでもなし、経験のない中学生に、いろんな道があることを教えてあげてなにが悪いのだろう。たとえばそれが自分の子供であったら、子供がいきたいと言えば高専は金がかかるから工業高校へいけということは言わないはずだ。

女房の言い方には不満はあったが、家庭にはそれぞれ事情があるのも事実で、寝た子を起こすなというのもある意味正しいのかもしれない。しかし、道で偶然出会った若者から、ほんの2~3分将来の話を聞く間くらいは現実を忘れることが許されるのではないだろうか。