広陵高校野球部の暴力事件が世間を騒がせている。だが、いちばんの問題は事件そのものよりも、学校が「こんなことが今の時代に通用する」と思っていたことにある。旧態依然の体質を放置するなら、教育に携わる資格そのものが疑われかねない。
野球部員は全員寮に入って生活しているという。子どもたちだけに自治を任せればどうなるか、普通に考えればわかるはずだ。暴力を本気で排除しようとすればできる。悪習が何十年も続いてきたのは、学校が見て見ぬふりをしてきたからにほかならない。
私自身、16歳から21歳まで全寮制の学校で過ごした。そこは暴力事件がよくニュースにもなった。入学一年前には暴力に耐えかねた一学年全員が脱柵して、夜の海を30キロ、カッターを漕いで家に帰ったという騒動まで起きた。その事件をきっかけに学校は「暴力絶滅」を宣言し、徹底的に介入するようになった。
その徹底ぶりはすさまじかった。寮は学年ごとに分けられ、上級生が下級生の棟に入るのは禁止。破れば三週間の家庭謹慎で、それが試験に重なれば落第確定。暴力行為を働けば即退学だ。私もある程度の制裁は覚悟して入学したが、実際には新入生同士で楽しく暮らすことができた。学校内でも同じ規律が徹底され、大東亜戦争以来の「海兵団的上下関係」は完全に消えた。同じ釜の飯を食った同期生80名は60年たった今でもみんな友達だ。
とはいえ、人間社会はそう簡単ではない。二年生に進級すると、同期の何人かが新入生に暴力を働く事件が起きた。守られていた側が立場が変わると同じことをしてしまう――集団生活の恐ろしさだ。当事者は即退学。厳しいと思ったが、それが規律を保つ唯一の道だった。
暴力追放の方針はクラブ活動にも及んだ。私が所属していた空手部は「些細な問題でもおこせば即廃部」と校長直々に釘を刺された。しかも「暴力」とは身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力まで含まれていた。そんなことを言われなくても、空手部はもともとみんな仲が良かったし、逆に稽古ははかどり、山陽新聞社主催の近県空手道大会では2年連続優勝も果たした。
広陵高校も学校を挙げて本気でやれば同じことができるはずだ。部員たちは野球をするために集まっている。くだらない上下関係や古い慣習に縛られる必要はない。規則違反があればその処分は学校に任せればいいし、生徒は野球に打ち込めばいい。夜も時間があればバットを振り、時には仲間と一緒に語り合う、腹が減ったらラーメンくらい食べてもいいだろう。
人生一度の青春だ、有意義で楽しい高校生活を送ってもらいたいものだ。そしていつの日か生まれ変わった広陵高校が甲子園にでてきたら応援したい。そんな日が来ることを期待している。