無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10773日

 男兄弟だったからか、わしは小さいときから女の子と遊ぶのが苦手だったような気がするな。それでも兄貴は結構女の子とも遊んでいたようなんで、それが原因というのではないのかもしれん。おとなの感覚からすれば、2つ3つでは男も女もないだろうと考えるんだろうが、それが違うんだな。わしは其の時の感覚もはっきり覚えているのでわかるんだが、とにかく女の子は怖かったし、なんかすごい存在だったな。女の子と遊んだ最初の記憶は、小学校にあがる2年前だと思う。うちの近所にわしと同い年くらいの女の子がいて、その子の家によく遊びに行っていた。わしの家に遊びにきたのは覚えてないな。ある日その子の家で遊んでたんだが、飽きて来たんだろう、わしがもう帰るというとその子が怒りだして、家には帰さんと言い出したんだな。わしは本当にこのまま家には帰れんのかと恐怖に震えたね。勝手口も玄関も閉められて、わしはなすすべがなかったんだが、しばらくしてその子のお父さんが帰って来たんだな。それでやっと解放されて無事家に帰る事ができたということがあった。ほんとうに怖かったな。

 また、道ばたで一緒に遊んでいた時、その子が突然おしっこだと言ってしゃがみこんだんだな。わしは何をするのかわからずに見ていると小便が流れて来たのでびっくりした事があった。すごいものを見たというか、小便は当然立ってするものという感覚があったもんだからショックだったな。女の子はしゃがんで小便をするんかと初めて知ったのがその時だったな。

 幼稚園に行ってもっと怖い事があったぞ。小学校2年だった兄貴が、佐伯さんという女の子の家に遊びに行くんで、わしも一緒に連れて行ってくれたことがあった。兄貴もやさしいところがあったんだな。ところがその子はわしがついて来たことが気に入らなかったようで、わしを遊びのなかに入れてくれないんだな。金持ちだったようで、わしらが見た事もないような大きな車のおもちゃが何台もあり、それで遊ぶんだが、わしにはそれを貸してくれない。兄貴がわしに渡そうとしても、怒って取り上げるんだな。そのうちに何かの用事でその子が出て行ったすきに、兄貴がこれで遊べといって一番大きな車を渡してくれた。わしはうれしかったね。しばらく遊んでいるとその子が突然部屋に入ってきて、わしが遊んでいるのを見つけるとすごい剣幕で怒って、わしからそれを取り上げたんだな。それを見てさすがに兄貴もカチンときたんだろう、もう帰るぞとわしに言って、2人でさっさと家に帰ったことがあった。

 女の子に対する恐怖心がいつまで続いたかは定かではないが、女の子は体も大きかったし、怖いという印象は小学校の高学年くらいまで持っていたんじゃないかな。一方、兄貴はそういう感覚とは無縁だったようだ。これは羨ましかったな。