無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10764日

 幕末の京都といえばあの新選組が有名だが、初めて知ったのは、中学3年くらいのとき、テレビでやっていた「燃えよ剣」を見てからだな。それから7年後、昭和48年遠洋航海のとき、練習船青雲丸の図書館にあった、子母沢寛の「新選組始末記」を読んで、そのとき初めて新選組というものの大まかな形を知る事ができた。3ヶ月程の航海中わしが読んだ本は2冊で、もう一冊は有吉佐和子の「恍惚の人」だった。これはショックだったな。

 さて、新選組のことはその後ずっと忘れていたんだが、5〜6年前にユーチューブを見ていたら、わしは見てないが昔テレビでやっていたらしい「新選組血風録」がアップロードされていた。ちょうど、肺病で寝ていた沖田を甲陽鎮撫隊として甲州へ向かう前の土方や斎藤が尋ねる場面だった。おそらく司馬遼太郎の創作だろうが結束信二の脚本が良かったんだろうな。作り事と思って見ていても、これからの彼らの行く末を知っているだけに、しんみりしてきたな。わしは全部見てみようと思い立ち、普段は絶対行かないんだが、背に腹は代えられん、近所の蔦やに走って、全巻をまとめて借りて来た。

 全巻通して見た後、司馬遼太郎の原作と、結束信二の脚本集も古本屋で購入した。で結論からいうと、テレビドラマが一番面白かったな。この頃は今と違って、いいドラマ作ってるよ。春日八郎の主題歌、舟橋元の近藤、栗塚旭の土方、島田順司の沖田、左右田一平の斎藤、どれも当たり役だったな。その後もいろんな新選組をみたが、このメンバー以上のものはなかった。NHK大河なんぞ馬鹿らしく見る気もしなかったな。舟橋元なんかは新選組の近藤をやらないかと言われて、てっきり主人公だと思ってやってきたら、土方が主人公だと知ってがっかりしたらしいぞ。

 歴史を知ったうえで、高いところから見れば、幕府にうまいこと使われて、最後は捨てられた、時代を見る目が無かった哀れな集団ということになるのかもしれんが、一人一人を見て行くと、それぞれにそれぞれの生き様がある。みんなその世界で一旗揚げようとして命をかけて戦ったんだろうな。勝てば官軍とはよく言ったもので、戦争で勝った長州も薩摩も偉そうに言っているが、一人一人はただ立身出世を夢見て京都に出て来た田舎者にすぎなかった。錦の御旗の行方によってはどう転んでもおかしくなかったんだが、.................命をかけることに価値がある時代だったんだろうかな。

 幕末になると残存資料も多く、人を斬った状況をこの時代程詳しく書き残したことは歴史上無かったんじゃなかろうか。これからも無いだろう。源平の昔から合戦は弓矢と槍がメインだったと言われているし、殺し方殺され方といった戦いの細部の記録は存在してないんじゃないかな。新選組が活躍したこの幕末は、首が飛び、腕が飛び、足が飛び、肩からへそまで幹竹割り、等接近して日本刀で斬り合うという、本当の実戦剣術のテクニックがピークに達した時代ともいえるんじゃないだろうか。