無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10555日

 定年で仕事を辞めたら、犬の花子を連れて車中泊をしながら旅をしようと考えていた。小太郎は女房に依存していて、女房がいないと生きて行けないので、これは初めからあきらめていた。そこで、それまで13年乗ったプレマシーを買い替える時に、車中泊にも使える車を探すことにした。いろいろ調べてみると、軽のバンが比較的安く、床もフラットになるらしいので、これにしようとほとんど決めていたんだが、やっぱり5人乗れたほうがいいと、女房が言うし、3速オートマいうのも、長い距離を走るのにはしんどいかなと考えて、軽はあきらめた。3列シートならすべての条件はクリアできるが、でかい車を買う気はなかったし、車に金をかけたくもなかった。

 条件としては、1000ccから1500ccの中古の小型車で、後ろのシートを倒したら170cm以上のスペースが確保できて、更に床がほぼフラットになるということになるが、この条件を満たす車はそれほど多くはない。トヨタヴィッツファンカーゴ、ホンダフィット、スズキソリオ、マツダデミオを調べて回ったが、ファンカーゴとフィット以外はフラットにならないことがわかった。ファンカーゴは既に製造が終わっていたので、フィットを探す事にした。

  フィットの荷室も完全フラットではないが、すのこを敷いて上にマットを置けばほぼフラットになるし、わしの身長なら、少し斜めに寝ると足を伸ばす事ができることがわかった。アルミ発砲エチレン断熱シートで窓の覆いを作り、夜間用のLEDランタンやインバーター、寝袋等必要と思われるものをだいたい揃えたので、暑くならないうちに、まずは家から3時間位で行ける道の駅に1泊してみる事にした。

 そのことを女房に話すと、実際に行く前に一度ぐらい車庫内の車で寝て、試してみといたほうがいいんじゃないのかと言い出した。確かに言われてみればその通りなので、その晩、花子と一緒に車中泊することにした。ところが、犬の習性からか、車の中をくんくん匂いを嗅いで回るし、ドアを開けろといってガリガリ引っ掻くし、家の前を人が歩く度にわんわん吠えるし、狭い車内を休みなく動き回るので、わしも寝る事ができない。結局2時間位で諦めて、車中泊は中止になった。

 たまには女房の言う事もきいてみるもので、ほんとうに出かける前に試してみといてよかった。あのまま出かけたら、睡眠不足で大変な事になるところだった。これで花子も無理だとわかったが、かといって1人で行く気にもならず、ぐずぐずしているうちに、いつのまにか熱も冷めてしまった。