無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと10843日

 最近あまり見かけなくなったが、わしが子供の頃は白タクというのが結構走っていたな。白ナンバータクシー、所謂白タクとは、要するに自家用車で営業を行っているもので勿論違法だが、乗っている客が違法かどうかは知らない。

 わしが小学4年生のときに兄貴と親父と3人で伯父さんの家に行ったときのことだ。バス停まで歩こうということになって、ぬかるんだ大通りを3人で歩いていたんだが、突然親父が通りの向こう側を走っている日産ブルーバードに向かって右手を上げたんだな。するとそのブルーバードはUターンしてわしらの横に停車した。わしはドライバーが親父の知り合いかなと思いながらドアをあけて中に乗り込んだが、そのドライバーがどちらへ行くのか聞いてきた。親父も当然のように「○○までなんぼで行ってくれるかな?」と料金の交渉をしていた。料金が決まると車は走り出した。途中何を話したか定かではないが、ドライバーが、雨が多いので車が汚れて困るというような事を話していたのを覚えている。

 わしは白タクに乗ったのはこれが最初で最後だが、白タクも普通の自家用車も外見では何も変わらないはずだ。このときになんでこれが白タクだと親父にわかったのか、今でも不思議だ。普通に道路を走っている日産ブルーバードのドライバーにしてみれば、手を上げられたって意味がわからんだろうとは思うが、案外当時は自動車は高価でタクシーも少なかったから、たくさん白タクが走っていて、手を上げれば結構な確率で白タクに当たったのかもしれんな。もしそうだとしても、数撃ちゃ当たるで手をあげるのは結構勇気がいるとは思うが。

 あの日伯父さんの家で親父にどうして白タクとわかったのか聞いたんだが、見たらなんとなくわかるとしか言わなかったような気がする。曰く言い難しというか、まあ、そういう感じなんだろうが、よくわからんな。

 兄貴は自衛隊パイロットで激務のため脳細胞が萎縮したのか、昔のことはほとんど覚えてないんだが、このことは覚えていたんだな。親父が死ぬ何年か前に酒を飲んだときに、なんで白タクとわかったんだと聞いた事があるんだが、親父はすっかり忘れていたな。昭和36年当時の白タクの見分け方、わかる人がいたら誰か教えてほしい。