無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと8307日 上海バンスキング

ユーチューブで、何十年ぶりかに吉田日出子の歌声を聴きながらコーヒーを飲んでいると、なんともいえない懐かしさとともに、むかし阿佐ヶ谷駅から歩いて10分ほどのビルの二階にあった飲み屋で、西村さんとビールを飲みながら聴いていたシーンを思い出した。たしか上海バンスキングというアルバムで、彼女が店に寄贈したものだった。なんで二人でその店に行ったのか、どんな話をしたのかも断片的にしか覚えてないが、あの時聴いた吉田日出子の独特な歌声だけは頭の片隅に残っていたようだ。

当時は戯曲に興味があり片っ端から読み漁っていた頃で、戯曲がどのように演劇になるのか知りたくて演劇関係のワークショップに参加していた。西村さんもその中の一人で特に親しいわけではなかったが、私が元船乗りだということを知って、同じように元船乗りがやっている店があるので行かないかと誘われたような気がする。

ビールを飲みながら上海バンスキングのバンスという言葉について話したのは覚えている。一般社会ではあまり使われないが、外国航路の船乗りは港に入港する前にその国の通貨がいくらほしいかを事務長に申告しておいて、入港後それを受け取って遊びに出かける。その前借りをバンスと呼んでいた。前借りだから当然のことだが、その金は日本に帰って受け取る給料から差っ引かれることになる。使いすぎて給料袋に金額が赤字で書かれていたなどという話もよく聞かされたものだ。

おそらくこんなことを話したような気がするが、一緒に行ったのはその一回だけだったから、あまり面白くはなかったんだろう。

今回改めて聴いた月光値千金、ウェルカム上海、リンゴの木の下で...........、もっと上手に歌う人もいるのかもしれないが、あの歌声には吉田日出子にしかだせない不思議な感情がこもっていて、聴いている方が引き込まれてしまいそうだ。女優としてテレビや映画でみる彼女もいいが、やはりあの歌声が何とも言えない。いつまでも聴いていたい。

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そういえば最近見かけないと思って調べてみると、高次脳機能障害で記憶をなくしていっているようだ。華やかな舞台で活躍した人だけにセリフが覚えられないことは悲しいことだっただろう。回復を祈りたい。

今もスピーカーから流れてくる歌手吉田日出子の歌声は若くかわいらしい。こんな素晴らしい歌声を残してくれた彼女に感謝したい。