いつまでも生きたいと願ったところで、長生きしてもたかだか80数年というところでしょう。私の場合は94歳まで生きるかもしれませんが、それとても、願って実現できるものではありません。
普段は忘れていても、死はすぐそこにあることに変わりはありません。それを忘れることによって神経症にならずにすんでいるだけだと思っています。意識した瞬間、死へのカウントダウンが始まり、これを止めるためには大きなパワーが必要になります。
私はそのパワーが生きる力だと考えています。この生きる力が無くなった時、若くても、肉体的に異常がなくても人は死んでしまうのではないでしょうか。
将来への希望、結婚、新しい家庭、子供の未来、大いなる力への畏怖等、私たちに生きる力を与えてくれるものは、常に意識の中に芽生えてきます。これは死を意識するようになった、人類だけに与えられた智慧だと思います。
母は10か月の闘病後、その生きる力が枯れ果てた時、死に対する恐れも薄れ、死を受け入れることができるようになりました。死はその時が来たら、決して恐ろしいものでは無いのかもしれません。
従容として死んでいきたいと願っていても、その時が来なければ難しいということでしょうか。