今年のノーベル賞以来、免疫療法のオプジーボがよく話題にのぼりますが、15年ほど前に、母が末期の肺がんと診断され治療法が無かった時、東京の日本医大に丸山ワクチンを受け取りに行ったことがありました。
丸山ワクチンに関しては、当時から効くとか効かないとかいろいろ言われていましたが、他に治療法がない患者にとっては頼るしかありません。全国から来ていた十数人の人たちも、きっとこの薬に一縷の望みを託していたことでしょう。
結局治ることはありませんでした。しかし春までは生きられないと言われていましたが、春満開の桜の下で写真も残せましたし、夏のセミの声も聴くことができました。
生きてはいても死と隣り合わせの生活は心に大きなダメージを与えていました。妄想に悩まされ、最後の頃には丸山ワクチンを打つこともやめてしまいました。そしてその年の11月25日に息を引き取りました。
亡くなった時、肺からの他の部位への転移はなく、片方の肺はきれいなままで、血液検査も全く異常なしでした。前向きに生きたらもっと生きることができたのかもしれません。
人の心は弱いものです。心の平衡が乱れたときそれを立て直すのは至難の技です。母の10か月の闘病をみてそれを思い知らされました。
オプジーボの話を聞いて、当時もしオプジーボがあれば、母の心も体も共に生きるための力になったんだろうかと考えてしまいました。