無駄に生きるとはどういうことか

うちの一族はがんで死ななければ94まで生きると、叔父の葬儀の日に叔母にいわれた。聞いてみると確かにわしの親父他何人も94で死んでいる。そこでわしも94の誕生日に死ぬと決めて、それまでの日数をあと何日と逆算し、切りのいい64で仕事も辞め、死への準備にかかった。その日々をブログに書いている。

あと8432日 復刻版祖国に還える

先日ダイレクト出版から「復刻版祖国に還える」という本を購入した。この出版社の出した本は今までに何冊か購入しているが、どれも素晴らしい本だった。

この「祖国に還える」という本は、昭和18年に中野五郎という朝日新聞記者が書いたものだが、なぜか出版停止となって、原本は数冊しか残されていない貴重なものらしい。

著者は真珠湾攻撃当時ニューヨーク駐在員で、ちょうどワシントンにいた時に開戦ニュースを知った。その後FBIに連行され収容所生活の後、昭和17年に捕虜交換船日本郵船の豪華客船浅間丸で、野村、来栖両大使一行と一緒に帰国したという珍しい経験をした人だった。私もそんな話を聞いたことがあったが、当事者の本が残っているとは知らなかった。

この手の復刻版がなぜ面白いかというと、戦後始まった日本悪かったという一方的な思想に侵される前の、当時の普通の日本人がどのような考え方をしていたかが素直に読み取れるからだ。国会図書館のwebで読めるのもあるが、如何せん読みにくい。

もともと無謀な戦争だとか、負けて当然だったとか、自分は戦争には反対したんだとか、戦後仕入れた知識でうまく過去を語る者がマウントを取ってきた社会の風潮には腹がたっていたし、そんなやつには「あんたも含めて、ほとんどの日本人は真珠湾攻撃を聞いて、やっとやってくれたかと大喝采をしたんと違うんかい?」と言ってやりたい。

まあ、そんなわけで戦前書籍の復刻版には大いに期待しているところだ。

書かれてあるのは昭和16年12月から翌17年8月帰国までのことで、シンガポール攻略、マニラ占領、インド洋作戦、ニューギニア上陸等緒戦の快進撃に喜ぶ一方で、ドーリットルの東京空襲で家族を心配したり、悲喜こもごもだが、一日も早く祖国に還って戦争遂行に協力したいという思いがあふれている。

また、この本で初めて知ったのは、アメリカでも物が不足していたということだった。マニラ陥落後、自動車の一般販売は禁止されて、製造中の65万台はすべて政府公用車に充当された。またゴム不足のおりからタイヤ保護のため自動車の時速を40マイルに以下にする。砂糖の切符制。一方200万人動員、1万トン級の貨物船が2年間で1800万トン進水予定とか、戦時体制への移行が急ピッチで進められている様子も書かれている。現地新聞やラジオニュースが情報源なので、当時のアメリカの様子がよくわかる。

朝日新聞ニューヨーク駐在員といえば、今と違って当時はかなりな知識層ということになるが、それでも日本の勝利を疑っていない。全編が、いじめられ疎外されてきた日本がやっと立ち上がった喜びにあふれている。ということは、もっと情報に疎いほとんどの一般国民も、少なくとも昭和17年秋の段階では、日本の勝利を疑っていなかったはずだ。それがGHQ占領以前の日本人の真の姿だったのではないだろうか。